褒めるメンター制度システム「SkillBox」の技術事例

このページについて

このページは、LINE API Use Caseサイト(2026年3月31日に閉鎖)に掲載していた記事を、LINE Developersサイトへ移管したものです。LINEプラットフォームを導入した企業の事例を紹介しています。なお、記事の内容は掲載時点のものです。

株式会社HRコミュニケーション

エンゲージメント向上の専門家であり、「従業員エンゲージメント調査」の支援を行う事業(設問設計、分析レポート作成、改善施策の提案・実施)と、エンゲージメント向上に向けた「ソリューション提供(SkillBox)」を行う事業(社内コミュニケーション課題の解決)を行っています。



サービス概要と解決したい課題

SkillBoxは、エンゲージメント向上を手間なく実現する「褒めるメンター制度システム」です。エンゲージメントが高い組織と低い組織を見比べた場合、低い組織では社員に対してポジティブな声がけがないのに対して、高い組織では「いいね!」「何か困っていることない?」「頑張ってね!」といったポジティブな声がけが周囲からたくさんあるという違いがあります。SkillBoxは、新入社員と先輩社員それぞれが「毎週1~2分程度の対応」でポジティブな声がけがたくさんある状態を自然に実現し、それによってエンゲージメントを向上させます。

具体的な使い方は、新入社員は 週に1回あらかじめ決められたアクションリストに対して「できた」「できなかった」という簡単な選択肢の中から1週間を振り返り回答します。回答画面には「頑張りの共有・相談など」といった任意入力の自由記述欄もついており、メンターに対して自身の状況を共有することができます。メンターは、入力された内容に対してスタンプやコメントなどでリアクションができ、そこでのやり取りを通じてメンターとして必要なフォローを手軽に行うことができます。

私たちは、SkillBoxの提供を通じて若手社員の離職という課題を解決したいと考えています。大卒就職者の入社3年以内離職率は3割以上(※1)となっており、多くの会社は若手社員の離職に関して課題感を抱えています。「メンター制度」はこれを解決する手段の一つとして、企業の48%が導入しており、そのうち70%が効果を感じる制度(※2)です。しかし、定期的な面談などにより先輩社員であるメンター側の負担が大きく、現場の判断で形骸化してしまっているケースも少なくありません。SkillBoxを活用することで、メンター側の負担を最小限に抑え、メンター制度をしっかりと機能させて離職率をさらに下げることができます。

※1:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」

※2:HR総研:人材育成「新入社員研修」に関するアンケート調査 結果報告(2020年)

スクリーンショット


LINEとの連携

スマートな通知で効果的に回答を依頼

LINE APIを使用しているのは、SkillBox上でメッセージが送られた際の、回答依頼の通知の役割として利用しています。SkillBoxでは週に1回1週間を振り返っての回答をしてもらうのですが、その際自発的にシステムへログインしてもらうだけでは、回答を忘れてしまう人が少なからず発生してしまいます。そのため、毎週回答者本人へ回答依頼の通知を行うのはとても重要なことです。当初、メールアドレスをユーザーごとに登録することができるようになっており、利用者一人一人に対して本人のメールアドレスへ「今週も回答をよろしくお願いします。」と通知を送る仕組みにしていました。

ところが実際にSkillBoxの利用者が増えていく中で、たとえば飲食店など店舗で働く方々の中には会社のメールアドレスを持たない社員さんもいることから、その方々への通知手段も必要だと気付いたのです。会社のメールアドレスを持たない人の多くは、会社から支給されるパソコンを1人1台で持っていないというケースが大半であり、その場合は「どの端末で回答をすればいいのか」という問題もありました。

これら両方を解決するために考えたのが「個人のスマホでも回答ができる」ということと、「個人のスマホに通知を飛ばせるようにする」ということでした。この点において、スマホを持つほぼ全員が利用しているアプリへ通知を行えるというのは非常に重要なことであり、LINE APIを利用することが最も適切だと考え採用を決めました。

メンタープログラムの効果的な運用を支援する取り組み

LINEでの通知に関しては、特段セグメントで切り分けての配信をしていないため、収集しているデータは特にありません。サービス全体としてのデータ取得・活用としては、LINE通知からの遷移でSkillBox上で回答を行う際、そこでの回答データが蓄積されていきます。取得されたデータの中にはアクションリストの達成率や回答率、自由記述欄の入力内容といったものがあるため、これらのデータを活用して離職アラート(※3)を出すということを行っています。また自由記述に対するメンターのコメントもデータ取得しており、これを分析することで、回答内容に対してメンターからのコメント案を作成する生成AIの開発にも現在着手しています。これが完成することで、メンターに対して「このようなコメントをするといかがでしょうか」というように文案提示がなされ、その内容で問題がなければワンクリックで新入社員に対してコメントを行えるようになるため、メンターの負担をさらに下げることができるようになります。

※3:離職アラートは、個別でのケアが必要な従業員を検知しアラートする機能のことです。


システムの解説

AWSを基盤としたプロジェクトの技術構成

私たちのプロジェクトでは、システムの基盤としてAmazon Web Services(以下、AWS)を選択しました。バックエンドには、機械学習のモデルを簡単に組み込めるPythonというプログラミング言語を使用しています。プロジェクトで使用するフレームワークには、ECS及びLambdaの双方で実行がしやすいように軽量なフレームワークであるFlaskを採用しています。CloudfrontとS3でvue.jsの動作するフロントエンド環境と、ECS+Flaskのバックエンド環境を構築し、データベースにはAuroraDBを使用しています。ECS上でLINE APIからのコールバックを受け付け、またAWS LambdaにてLINE APIを利用したユーザーへの定時通知処理を実行しています。CIにはGitHub Actionsを、CDにはAWSのCode Pipelineを利用しています。LINEに関しては、今回通知を目的としているため、LINE WORKSとMessaging APIを利用しています。

回答習慣の形成と離職率改善への寄与

会社のメールアドレスを持たなかった企業においてもSkillBoxを導入していただけるようになり、実際にLINE APIの連携機能(LINE WORKS、Messaging API)を利用している導入企業様からは簡単で使いやすいと非常に高い評価をいただいています。たとえば実際の事例として、美容クリニックを全国に展開している株式会社オリーブスパ様が挙げられます。新入社員に対して元々は紙による日報運用でサポートをされていたのですが、SkillBoxはそれを便利に進化させたものとして評価いただいており、個人携帯の利用に関して「運用開始にあたっては特に何の問題もなく現場からすんなり受け入れられた」「離職防止に役立っているという実感がある」と大変お喜びいただいています。(※4)

※4:【SkillBox導入事例】株式会社オリーブスパ様

SkillBoxの今後の機能改善に向けた展望

SkillBoxに関しては、今後も継続的に、より便利に使え、より効果が出るように機能改善をしていきたいと考えています。その際意識したいこととして、「使う側が楽しいシステムでないといけない」ということを社内では話しています。この中には、たとえばゲームフィケーションのようにゲーム性を持たせるというシステム内容に関する「ハード面の話」もあるのですが、運用面に関する「ソフト面の話」として、「いかにストレスなく自然な形で回答の習慣化を促すか」というテーマも含まれています。この点において、回答依頼の通知を行うこと、あるいは回答をする際の端末に関しての工夫ということも継続的に考えていく必要があり、LINEとのAPI連携は今後さらに工夫ができるところかもしれないと考えています。たとえば、LINE公式アカウント上でSkillBoxの回答をそのまま行えるようになったり、SkillBoxでなされたコメントをLINE公式アカウント上でそのまま読めるようにするなど、将来的な構想部分ではありますが、利用者が手軽に使えるようにする工夫を今後さらに推し進めていければと考えています。

LINE APIに対する要望

LINE APIはドキュメントも豊富で導入はスムーズに行えました。現状はLINEに通知を送信してそこからの入力はWeb上で行っていますが、LINE上での入力の実装も検討していました。その際に複数の選択や入力が必要になるフォームにおいて一度回答した内容の取り消しや編集を行うフローが複雑になりがちだった為、断念しました。通知処理としてLINE WORKS APIも利用していますが、こちらはエラーメッセージに含まれる情報が少なくなぜエラーになったのか、要因が1つに特定できないケースがありました。

これからLINE APIを使って開発される方へ

LINE APIを用いたサービスを2年以上運用していますが、今のところ通信でのエラーなどの問題が出たケースがほとんどなく、現状では並行で導入している類似の他社サービスよりも安定して利用できています。


関連リンク